ぴーちくぱーちく

うるさーーーい!

のんびりとした空気の中をウイルス入りの風が吹き抜けていく

今年の冬は短かったように思う。12月のギリギリまであまり本格的な寒さを感じず、2月の後半には20度超えをする日が現れ、3月になって逆に雪の降る日があったりもしたが、全体的に見て凍えるような冬の雰囲気を味わう時間は短かった。暖かい日差しの中を隣の駅まで歩いていこうと、息子と緑道を散歩する。木を見上げれば桜が散り、地面からも黄色や白の花が咲き、それをひとつひとつ眺めながら「なんていう名前だろうね」「写真に撮っておいて、あとで調べてみようか」なんて話す。遊歩道に落ちているものとしては異例の長さの枝(僕の身長近く、160cmはあった)を見つけた息子は、大喜びでそれを拾い、あちこちに突き刺して回っている。「人にぶつかると危ないから、駅が近づいてきたら捨てるんだよ」と注意すると、聞いているのだかいないのだか、ぶんっと枝を一振りして声をあげずに返事をされた。まあいい、どうせあまり人など歩いていないのだから。

 

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平日の昼間に、子供と一緒にこんなふうな時間を過ごすことがあるなんて。電車で行けば2分の道を、たっぷり30分以上かけて歩く。それだけのことなのだが、この10年くらい時間が余っているなんていうことはほとんどなかったものだから、ずいぶんと贅沢をしているように感じる。休みの日となると「たまの休みなんだから」と家事をしたり、どこかに出かけたり、本当の意味で休むことなんて少なかった。それが今では平日、しかも仕事の合間に軽く外に出ただけのタイミングなのだが、自分のペースで息抜きをすることができる。会社で決まった時間を過ごす仕事のやり方をしているときには、考えられなかったことだ。

 

のんびりとした空気の中をウイルス入りの風が吹き抜けていく。

 

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コロナのあれこれで外出自粛が騒がれている。自粛というのは自主的にするから自粛なのであって要請されてするものではないとか、それはそうなんだけども、それはそうとして感染を避けるためには外出は控えるべきというのは変わらない事実としてあって。昨日ついに緊急事態宣言の話が出て、でも「緊急事態宣言が出ても、日本では外出を禁止する強制力はないから自粛要請と大差ない」みたいな話もみんなしている。でも僕はあんまそう思っていなくて。「土日の外出を自粛をしろ」って言われたら、なんか結構みんな真剣に外に出ちゃいけないみたいな雰囲気を出して、スーパーでは買い占めのため品切れみたいなことが起きている。人はムードに流されるので「緊急事態宣言」が出たら、やっぱり緊急事態として動かなくてはという気持ちに多少はなると思う。そうなってくると、外に出るなって言われているのに外出してる人間を非常識だと攻撃してくるやつが現れる。大事なのは感染しないために他人に近づかないということで、なぜ外出を自粛しているかということを考えず「外出しているやつはバカ」ということに、緊急事態宣言下ではなってしまう可能性がある。実際に、すでにそういうことを言う人間は現れている。

 

僕は仕事は変わらずあるけれど、テレワークになった影響で殆どの時間を自宅で過ごしている。息子も学校が休校になってしまったのでずっと家にいて、本屋で購入したドリルなんかを日中はやりつつ、ずっと閉じこもっているとなまってしまうので、僕の仕事の空き時間を狙って一緒に公園に行って鬼ごっこをしたり体を動かすようにしている。ゲームやマンガが好きでインドア派な息子は「外に行くよ」というと面倒臭がって用意することをしぶるのだけれど、一度外に出てしまえば気持ちがいいのか「もう帰るよ」と声をかけてもまだもう少し遊びたいと駄々をこねたりもする。そんなとき、じゃあもうちょっとだけ遊んでおいでといって息子を野に放し、僕はベンチに座ってそれをぼんやり眺めていたりする。

 

ちょっと前までは考えられないくらい、ゆったりとした時間の過ごし方をしている。けれども「外出自粛」を「絶対に外に出るな!」という意味に受け止めている人からすると、なんてやつらだ!と思われるのかも知れない。実際には、こんなちょっとでも外に出ないで家に閉じこもっているほうが感染のリスクは抑えられるのだろうけれど、動きたい盛りの小学生を縛り付けておくのもむずかしい。どうするのが正解かわからない。

 

かえる目細馬宏通さん(https://twitter.com/kaerusan)が先週からツイキャスhttps://twitcasting.tv/kaerusan/show/)を始めて、それをたまに聞いている。その中で外出の是非について持論を述べていて「今日、古本屋に一件行って本屋に一件行った」「そういうのはいかんという人もいるでしょうが、私は、これからはこういうのが毎日試されるんだと思っています」「いま古本屋に行くのが現在の状況に照らし合わせて正しいかというのは、やはり出かけるにあたりちょっとは考える」と喋っていて、淡々と話しているのを聞いていると当たり前のことを言ってるように感じてしまうのだけど。その「ちょっと考える」ことを「非常事態なんだから」とやめてしまうことが僕は恐ろしい。細馬さんがどんなことをちょっと考えたのかは、4月4日のツイキャスhttps://twitcasting.tv/kaerusan/movie/603595958)を見て確かめてほしい。トークだけじゃなくギターの弾き語りも聞けて、気分転換にとてもいいですよ。