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うるさーーーい!

ワワフラミンゴ「くも行き」を観て

ワワフラミンゴの公演「くも行き」を観てきた。

 

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初日はアフタートークがついていて、トークゲストで来ていた橋龍さん(ウンゲツィーファ)は「1時間以上あったのに、なにも思い出せない。なにもなかったなって思っちゃうのが逆にすごい」、山内晶さん(キリグス)は「話の意味とかを破壊している」という感想を出し、それに対して劇団代表の鳥山フキさんが「話をしているとき人は必ずしもそのことだけを考えているわけじゃない」「いまこうして観ているあなたたちも、目の前のものを観ながら、わりかしいろんなことを考えてると思いますよ」と、今回の公演(もしくは自分の作ろうとしているもの)について語っていたのが印象的だった。

 

いきなり劇そのものではなくアフタートークの話を始めてしまったけれども、そもそも「くも行き」という舞台は筋道を立てて語れるような物語や出来事はなくて、観ている間はずっと狐につままれているような気分だった。例えばおじさんと青年が会話をしていると、突然に青年が透明人間になってしまっておじさんは困る。そこに大量の雪が降ってきて舞台を散らかし、青年とおじさんは雪の片付けを始め、青年が透明人間になったことは解決しないまま話は一区切りし、次のシーンに移ってしまう。ひとつひとつの会話が軽妙だったり“突然に透明人間になる”“大量の雪が降ってくる”みたいなイベントは豊富だから観ていて別に飽きないのだけど「え、今の場面はなにを観せられていたの?どうなったの?」という事態の連続を味わうことになる。

 

そこで舞台を読み解く鍵となるのが、アフタートークで鳥山さんが言っていた「人間は常に別のことを考えてる」という話。何か大事な話をしているときに、うわのそらで別のことを考えている状態ってあって、その「うわのそら」の部分って面白そうだよねってことなんじゃないか。

 

さっきの大量の雪が降ってくる場面では、観客がビクッとするくらいの量の白い塊が天井から落ちてくるわけだけど、その場面でおじさんが言うセリフが「雪のおかげでちょっと見えたよ(透明人間だけど)」というもので。異常事態が起きているときこの人は「あ、ちょっと見えた」ってことが一番気になっていたんだってことが、このセリフからわかる。そういう観客の視点から少しずれた感想が差し込まれるのは、ちょっとうわのそら感があった。

 

そもそも雪が降って来る前には、人が透明になるっていう大変なことが起きていて、それについて話し合ってたのに雪が降ってきたせいでうやむやになって、とにかく話がずらされ続けている。そういう1つの物事に思考をフォーカスさせない「ずっと気が散りっぱなし」の状態を、ワワフラミンゴは作ろうとしているのかもしれない。

 

このあいだ、わりかし舞台を観に行っている友達と飲んだとき、僕は普段あまり演劇を観ないので、ほかの娯楽と比べて演劇の面白いところってどこなのかってことを訊いたら「舞台の上でいろんなことが起きていて、いろんな観方ができるところがいい。観方が固定されている映画のような作りのものは、あまり演劇でやる意味を感じない」という説明をされ、わかるようなわからないようなと思っていた。でもワワフラミンゴの舞台を観て、ちょっとその「観方が固定されていない」という考え方がわかった気がする。

 

長々書いたけど、人の感想とか「ふーん」って感じでしょう。僕もそう思うので、観て自分で考えてください。

 

ワワフラミンゴ「くも行き」見逃すな!まだ間に合う!

2019年12月18日(水)~22日(日)

東京芸術劇場 シアターイース

http://wawaflamingo.com/next